マイクロ波スイッチについて
マイクロ波スイッチは、高い信号周波数を扱う事を前提としたスイッチです。従来、手作業で計測機器や信号発生器と、被検査対象の検査ポイントを何度も繋ぎ変えて測定した作業に対し、マイクロ波スイッチを利用する事で、検査やテストの自動化を進める事ができます。
マイクロ波スイッチ製品の種類
マイクロ波スイッチは、50Ωと75Ωのインピーダンスに合わせたPXI(e)規格の製品とLXI規格に対応した製品が用意されております。
- PXI規格 / PXI Express規格のマイクロ波スイッチ製品 (製品一覧)
転送スイッチ(トランスファ・スイッチ)、SPDTスイッチ、マルチプレクサ - LXI規格のマイクロ波スイッチ製品 (製品一覧)
転送スイッチ(トランスファ・スイッチ)、SPDTスイッチ、マルチプレクサ、マトリックス・スイッチ
PXI(e)マイクロ波スイッチモジュールの利用方法について
マイクロ波スイッチにはPXI(e)規格の製品は従来のPCI規格をベースにしたPXIモジュールと、PCI Express規格をベースしたとPXI
Expressモジュールがございます。これらのモジュールは対応するシャーシに入れて頂く事で、Windows
PC上のアプリケーションからは、PCIカードとして認識されるため、従来のWindowsアプリケーションの開発環境をそのまま利用する事ができます。
ピカリングインターフェス社製のPXIマイクロ波スイッチモジュールは、同じく、ピカリング社製のLXIモジューラシャーシに入れて頂く事で、LANケーブル1本で、PCから制御できるLXI規格の製品としても利用する事ができます。
LXIマイクロ波スイッチの利用方法について
LXIマイクロ波スイッチは、Windows PCのアプリケーションからLANケーブル1本で自動制御可能なスイッチです。市販のルーターを利用すれば、複数のLXI規格に対応した製品を複数組み合わせて、より大規模なシステムの構築が可能となります。
マイクロ波スイッチを利用する際の注意事項
インピーダンスと使用する周波数帯域が用途に合っている事を確認してください。
切断された配線の信号の反射を防ぐためには終端機能を内蔵した製品をご利用ください。
製品に実装されているコネクタに適合するコネクタ ケーブルを必ず使用してください。
適合しないコネクタを利用した場合は、製品本来の性能が引き出せないだけでなく、製品本体やケーブル側のコネクタを破損させる恐れがあります。
複数の被検査対象に対する伝送路の損失を同一にするためには、接続に使用するケーブル長も同一にすることが必要です。
ピカリング社では、コネクター ケーブルの組配も承っております。
マイクロ波転送スイッチについて
マイクロ波トランスファ・スイッチ(Transfer Switch)は、日本語で、転送スイッチとも表記され、マイクロ波スイッチング システムに実装されています。
転送スイッチの動作について
2つの入力と2つの出力を備えた4つの端子デバイスで、1つの入力をいずれかの出力に接続し、2番目の入力を他の出力に接続できます。
転送スイッチの各ポジションと接続状態を下記に示します。
マイクロ波転送スイッチの構成について
マイクロ波転送スイッチには、下記の製品構成のものが提供されています。
- Single = 転送スイッチが製品に1つだけ含まれる構成です。
- Dual = 転送スイッチが製品に2つ含まれる構成です。
2023年7月現在、マイクロ波転送スイッチには、最大DC ~ 50 GHzまでの帯域に対応した製品が用意されております。
マイクロ波転送スイッチの使用例
マイクロ波転送スイッチは、信号発生器と試験対象の経路上に、減衰器などを配置し、伝送路の条件を自動的に切り替えながらテストが可能となります。
マイクロ波SPDT (単極双投) スイッチについて
マイクロ波SPDTスイッチは、外部から入力された2つ信号のどちらか一方を共通の接続信号に対して接続するためのスイッチです。
マイクロ波SPDTスイッチの構成について
n x SPDTと記述されている場合には、nは、バンク数と呼ばれる、1つの製品に対して、何個SPDTが含まれているかを示しています。
マイクロ波SPDTスイッチには、非終端(Unterminated)、内部終端(Internally Terminated)、外部終端(Externally Terminated)の製品が用意されております。
2023年7月現在、マイクロ波SPDTスイッチはDC ~ 110 GHzまでの帯域に対応した製品が用意されております。
非終端 (Unterminated)
Terminatedの記述が無い製品や、Unterminatedの記述がある製品の場合には、終端機能を持っていない非終端の製品となります。
マイクロ波SPDTスイッチの端子は次の様になります。
・Com (Common) =共通接続
・NC (Normally Closed) = 通常時閉鎖
・NO (Normally Open) = 通常時開放
内部終端 (Internally Terminated)
マイクロ波スイッチは周波数が高い信号を扱うために、終端処理機能が内蔵された製品も用意されております。マイクロ波SPDTスイッチや、マイクロ波マルチプレクサ・スイッチには、終端機能を持つ製品が用意されております。
TerminatedまたはInternally Terminatedという記述がある製品には、内部終端機能を持っており、非導通となった信号を主担に自動的に終端抵抗への接続に切り替えます。
外部終端 (Externally Terminated)
マイクロ波スイッチの終端には製品の内部に終端抵抗を内蔵する方式と、専用のコネクタを介して、外部の終端抵抗に接続できる構成の製品があります。
Externally Terminatedの記述がある製品には、外部終端を接続するための専用のコネクタを備えています。従って、こちらの製品で終端を行うには、別途終端抵抗を外部に用意して頂く事が必要です。
ラッチ機能の有無
SPDTスイッチで、Latchingの記述がある製品は、スイッチの電源が切られても、電源が入れられた際のスイッチの状態を保持し続けるラッチ機能が内蔵されております。システム全体で、常時スイッチの電源を入れる必要が無いため、低消費電力を求められるシステムに向いた機能です。
Latchingの記述が無い製品では、スイッチの電源が切られると、自動的にComとNC間が自動的に接続され、ComとNO間の接続は自動的に切れるデフォルトの状態に遷移します。スイッチの電源が切れた際のデフォルトの状態で安全な方向に動作するように設計する事でフェールセーフを実現させる目的で使用する事が可能です。
マイクロ波SPDTスイッチの使用例
マイクロ波SPDTスイッチまたはマルチプレクサのマイクロ波スイッチが1セットあれば、複数のテスト・ポイントと、試験装置や計測装置の切替えを自動化する事ができます。
マイクロ波SPDTスイッチまたはマルチプレクサのマイクロ波スイッチが2セットあれば、信号発生器と試験対象の経路上に、減衰器などを配置し、伝送路の条件を自動的に切り替えるテストが可能となります。
マイクロ波マルチプレクサ・スイッチについて
マイクロ波マルチプレクサ・スイッチは、外部から入力されたn本の信号のうち、どれか1本の信号だけを共通の接続信号に対して接続するためのスイッチです。
マイクロ波マルチプレクサ・スイッチの構成について
SPnTと表記される場合、nは投数を意味し、n対1接続のマルチプレクサ・スイッチです。
m x SPnT
と記述されている場合には、mは、バンク数と呼ばれる、1つの製品に対して、何個SPnTスイッチがが含まれているかを示しています。
製品名の中でmは次のように表記されます。 1 = Single、2 = Dual、3 = Triple、4 = Quad
また非終端と内部終端の構成の製品が用意されております。
2023年7月現在、マイクロ波マルチプレクスイッチはDC ~ 67 GHzまでの帯域に対応した製品が用意されております。
SP4T (単極4投) = 4:1マルチプレクサ
SP4T (単極4投) = 4:1マルチプレクサの非終端の構成の回路と終端 (内部終端) の構成の回路
SP6T (単極6投) = 6:1マルチプレクサ
SP6T (単極6投) = 6:1マルチプレクサの非終端の構成の回路と終端 (内部終端) の構成の回路
SP8T (単極8投) = 8:1マルチプレクサ
SP8T (単極8投) = 8:1マルチプレクサの非終端の構成の回路と終端 (内部終端) の構成の回路
SP10T (単極10投) = 10:1マルチプレクサ
SP10T (単極10投) = 10:1マルチプレクサの非終端の構成の回路と終端 (内部終端) の構成の回路
SP12T (単極12投) = 12:1マルチプレクサ
SP12T (単極12投) = 12:1マルチプレクサの非終端の構成の回路と終端 (内部終端) の構成の回路
マイクロ波マルチプレクサの使用例
多数の試験対象と試験装置を繋ぎ変えるための時間は、開発の工数にとって無視できない作業時間となります。 マイクロ波マルチプレクサ・スイッチ (MUX)を活用することで、手作業による接続の繋ぎ変えを自動化できます。
PXI(e) マイクロ波マルチプレクサの使用例
LXI マイクロ波マルチプレクサの使用例
マイクロ波マトリクス スイッチについて
マイクロ波マトリクス スイッチは、複数の接続を同時に行う事ができる自由度の高いスイッチです。
2023年7月現在、DC~10GHz, DC~18GHzに対応した製品が用意されております。
マトリクス スイッチの動作について
マイクロ波マトリクス スイッチは、複数の、X軸上の端子からY軸上への端子への接続を繋ぎ借る事ができます。
マイクロ波マトリクス スイッチの接続状態の例
マイクロ波マトリクス スイッチの構成について
マトリクス スイッチは3×3,4×4,8×4の大きさのものがあり、終端機能やLoop Thru機能のオプションがあります。
マイクロ波マトリクス スイッチのサイズ
単一のマトリクス スイッチ内の接続の損失はどの経路でも同様ですが、8×4の大きさの構成は、内部的にDual 4×4を相互接続した構造となっているため経路によっては損失が異なります。
マイクロ波マトリクス スイッチのオプション
終端機能やマトリクスの大きさを拡大するためのLoop Thruオプションを持った製品も用意されております。
Loop Thru機能を利用したマトリクスの拡大
マトリクス スイッチは、Loop Thru機能を利用する事で、複数のマトリクスを接続し、規模を拡大できます。
Loop Thru機能で4×4を4つ接続し、8×8の大きさ規模を拡大した例
Switch Path Managerという製品を利用する事で複数のマトリクスをソフトウェア的に1つの大きなマトリクスとして扱えます。
マイクロ波マトリクス スイッチの使用例
LXIマイクロ波マトリクス スイッチの使用例
PXI(e)マイクロ波スイッチのマウント方法について
マイクロ波SPDTスイッチや、マイクロ波マルチプレクサ スイッチは、スイッチの物理的なサイズが多くなる傾向にあります。 その為、PXI(e) マイクロ波スイッチ モジュールでは、PXI(e)モジュール本体のフロントパネルに対し、 マイクロ波スイッチを取り付ける、パネル マウント(Panel Mount)と呼ぶ構成と、マイクロ波スイッチを、本体から切り離して取り付けるリモート マウント(Remote Mount)の構成の製品を用意しております。
パネル マウント構成
パネル マウント(Panel Mount)と呼ぶ構成では、PXI(e)モジュールのフロント パネルに対し、マイクロ波スイッチが取り付けられています。
マイクロ波スイッチのサイズが大きなものの場合には、物理的に複数のPXIスロットを占有します。
特にマウント方法の記述が無い場合には、パネル マウント構成が取られます。
リモート マウント構成
リモート マウント(Remote Mount)と呼ぶ構成では、PXI(e)モジュールに対し、マイクロ波スイッチを、本体から切り離して取り付ける構成です。
リモート マウント構成のは以下の通りです。
・PXI(e)マイクロ波スイッチ モジュールとしては、PXI(e)スロットを1枚分のスロットだけ占有するため、必要とするPXI(e)シャーシのスロット数を節約できます。
・マイクロ波スイッチの位置をPXI(e)モジュールから、離した位置にスイッチ付属のケーブルにより、自由に配置できるため、パネル マウントと比べて、より、信号の経路を短縮できる位置に配置する事ができるようになります。
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PXI / PXIe マイクロ波 スイッチ モジュール
LXIマイクロ波スイッチのカスタマイズについて
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