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半導体テスト向け駆動ガード測定

半導体ウェハーの受け入れテストにおける駆動ガード配線切替え技術による低リーク・スイッチの活用

2極のスイッチ・ガード設計に基づくスイッチング方法論を特徴とする一連のスイッチング製品を発表しました。 この製品は駆動ガード測定(driven-guard measurement)システムで使用でき、多数の非常に微小な電流測定を迅速かつ正確に自動的に実行できます。新しいスイッチ ガード設計の絶縁抵抗は1テラ・オーム (1TΩ= 1012Ω) を超え、漏れ電流はフェムト・アンペア (1fA = 10-15A) 領域の性能を兼備えています。

ピカリング社では、大手半導体企業と緊密に連携して、ウェハー受け入れテスト・システムで使用するためにこれらの製品を開発、改良しました。これらは、半導体の製造を行うメーカーがプロセス制御の監視と歩留まり向上のために使用する高速パラメトリック・テスタです。

ウェハー受け入れテスト (WAT)

半導体メーカーにとって、集積回路の歩留まりを最大化する製造プロセスの設計と制御は極めて重要であり、歩留りの低下が1%ポイント発生するごとに数百万ドルの収益を失う可能性があります。ウェハー受入れテスト(WAT:Wafer Acceptance Testing) は、半導体製造プロセスの一貫性を検査するテスト戦略です。プロセス開発と製造テストの両方の段階でウェハーに対して一連の比較的単純なテストを実行することにより、ウェハー製造エンジニアは歩留まりの向上に役立つ統計データを迅速に生成できます。

半導体メーカーは、イン・ラインおよびエンド・オブ・ライン・テスト中に自動プローバーと組み合わせてWATシステムを使用し、金属層と誘電体の層の間にウェハーに追加された何百もの特殊な構造に対して電気パラメトリック テストを行っています。これらのテスト構造には通常、抵抗、コンデンサ、ダイオード、トランジスタが含まれており、実際のデバイスの代用であり、生産プロセスのパフォーマンスを検証するためのテストデータを高速に収集できるように特別に設計されています。製品の成熟度に応じて、構造はダイ自体の周囲に配置されることもあれば、ウェハーからダイを切り分ける際のスクライブ・ライン(ダイ間の領域)に配置されることもあります。半導体メーカーは、これらのテストからデバイスの性能データを迅速に収集し、フィードバックに応じてプロセスを適切に調整できます。

Figure 1 - A typical Wafer Acceptance Test

図1.一般的なウェハー受け入れテスト

ウェハー受入れテスト(WAT)システムでは、必要な電流対電圧 (IV) および静電容量対電圧 (CV) 測定を行うためにさまざまな計測機器が必要です。これには通常、さまざまなソース/測定ユニット (SMU)、高精度デジタル電圧計、パルス ジェネレータ、静電容量計が含まれ、すべて適切なスイッチ・マトリックスを介してウェハー上の適切なテスト・ポイントに接続されます。パラメトリック測定セットには、高インピーダンス・デバイスのオフ状態リークや誘電特性をテストする場合など、サブ・ピコ・アンペア範囲の電流測定が日常的に含まれています。 これらの測定では、スイッチ マトリックスと相互接続を含む完全なテスト・システム・チャネル間の絶縁が1012Ωを超える必要があります。 これにより、(テスト接続の絶縁体間の電圧降下による)リーク電流ノイズが微小電流の測定に悪影響を与えるのを最小限に抑えることができます。この極めて高いレベルの絶縁を実現するには、通常、「駆動ガード(Driven Guard)」測定による手法が必要です。

駆動ガード測定 (Driven Guard Measurement)

試験装置を被試験デバイス (DUT) に接続する通常の同軸ケーブルでは、導体が特定の電位にあり、外側のシールドが接地されている場合、通常はナノ・アンペア(nA)領域の小さな漏れ電流が、メインのプローブ導体とケーブルの外側の電磁シールドの間の絶縁体を通過することがあります。これは、ミリ・アンペア(mA)またはマイクロ・アンペア(μA)の範囲の電流測定には影響しないかもしれませんが、この大きさの漏れは、ピコ・アンペア(pA)またはフェムト・アンペア(fA)の範囲の電流測定に大きく影響します。

駆動ガード(Driven Guard)は、図2に示すように、微小な電流を測定したい、高インピーダンスの端子(Force)に対し、ボルテージ・フォロワまたはバッファーを介して、同じ電位で駆動される低インピーダンスのガード(Guard)導体で囲む事で、高インピーダンスのフォース(Force)端子から周囲に対する電位差を抑える事により、フォース(Force)端子から外部への漏れ電流を最小限に抑えます。

理想的な状態ではフォース(Force)端子とガード(Guard)導体間に電位差がないため、この2つの間の絶縁を通って漏れ電流が流れることはありませんが、実際には、バッファーがフォース(Force)端子の電圧を正確に追跡することができないため、誘電体層を通過する漏れ電流は通常はフェムト・アンペア(fA)の範囲にあります。

Figure 2 - Driven guard measurement configuration using triaxial cabling

図2.三軸ケーブルを使用した駆動ガード測定構成

ガード(Guard)導体がフォース(Force)端子と同じ電位にあることを考慮すると、ユーザーの安全のために同軸コネクタ絶縁体または特殊な3軸ケーブル (トライアキシャル・ケーブル:triaxial cableは、通常は”triax”と短縮されて表記されます) が必要です。3軸ケーブルのアセンブリは、追加の絶縁層によってガード(Guard)から分離された、接地された外部EMIシールド導体を備えています。ガードと外側シールドの間に小さな電流が流れる可能性がありますが、これはバッファー回路によって供給されるため、測定電流には影響しません。3軸ケーブルを機器またはスイッチの同軸端子に接続する必要がある場合は、安全性と精度の両方を確保するために特別な3軸 – 同軸アダプターを使用する必要があります

測定結果が安定するまでの時間 (セトリング・タイム)

微小電流の測定では、ケーブル絶縁の容量効果により長いセトリング・タイム(測定が安定するまでに必要となる時間)が必要になります。この寄生容量は、その大きさと印加電圧の変化率 (Ic = C dV/dt) に比例して充電電流を引き込むため、テスト・スケジュールで印加電圧の掃引が必要な場合、これは特に重要です。この充電電流を減らすために掃引速度を遅くすると、全体のテストサイクル時間が増加します。これは、製造プロセスを最適化し、製品の無駄を最小限に抑えるためにテストを完了し、結果を迅速に分析する必要があるプロセス制御監視アプリケーションにとっては望ましくありません。駆動ガードを使用すると、バッファーの応答が掃引速度に比べて速い場合、ガード(Guard)導体がフォース(Force)端子間の電圧が一定に保たれるため、充電電流がなくなり、セットリング・タイムを最小限に抑えられます。

Pickering's LXI Modular Switched Guard Matrix (model 65-290)

ピカリング社のLXIモジュラー・スイッチド・ガード・マトリックス (モデル 65-290)

65-290は、最大1012Ω(駆動ガード、10V駆動、周囲温度 21℃、相対湿度40 %の条件で測定) のチャネル間およびチャネルからグランドまでの絶縁を備えたスイッチド・ガード・リード・リレー・マトリックスのソリューションを提供するスケーラブル・モジュラー・マトリックス・プラットフォームです。 マトリックスは、標準のスケーラブルな 2U LXI スイッチング シャーシ (モデル 65-200-002)に16×16 (モデル 65-290-001)または8×16(モデル 65-290-002)スイッチ・ガード・プラグイン・マトリックス・モジュールを装着することで作成されます。 アプリケーションの柔軟性とコスト効率を最大限に高めるために、プラグインを同じシャーシ内に混在させることができます。プラグインは、絶縁コネクタ・カバー付きのマイクロミニチュア同軸(MMCX)コネクタを介して、外部からの駆動ガードXおよびY接続へのアクセスを提供します。必要に応じてX軸とY軸の両方に拡張できるように、フロント・パネルのMMCXループ・スルー・コネクタを介してプラグインを相互接続することにより、異なるサイズのマトリックスが形成されます。ループ・スルーを使用して、非常に大規模なスイッチング・アプリケーション向けにマトリックスを追加のシャーシに拡張することもできます。各シャーシは最大6つのプラグイン・モジュールに対応しており、アクセスしやすいようにシャーシの前面に装着されます。ユーザーは、最初に必要なプラグイン モジュールの数を指定でき、後日シャーシをフィールド・アップグレードしてマトリックスを拡張できます。

Pickering's LXI Scalable Switched Guard Matrix Plug-in (model 65-290-002)

ピカリング社のLXIスケーラブル・スイッチド・ガード・マトリックス・プラグイン (モデル 65-290-002)

各65-290-002 プラグインは、信号とガード接続で構成されるすべてのスイッチド・パスを備えた8×16マトリックス・モジュールです。図3に示すように、マトリックスは、X接続とY接続の両方に分離スイッチを備えた2つの8×8マトリックスで構成されます。2セットのY信号は、16個のフロント・パネル上のMMCXコネクタにルーティングされます。X信号は、分離スイッチを介して2つのマトリックス中間で接続され、8つのMMCX コネクタにルーティングされます。2つのマトリックスを分割するこの仕組みにより、スタブの長さが短縮され、帯域幅とクロストークのパフォーマンスが向上します。XバスとYバスには、さらにMMCXコネクタのセットを介したループ・スルー機能もあり、標準的な外部ケーブルを介して、他のプラグインへのマトリックス拡張が容易になります。1つのシャーシに6つの8×16モジュールを入れた場合の最大の間マトリックスの構成は、Y軸用のループ・スルー接続を利用した場合48×16、X軸用のループ・スルー接続を利用した場合8×96となります。

Figure 3 - Schematic diagram of the 65-290-002 LXI  switched guard matrix plug-in

図3.LXI スイッチド・ガード・マトリックス・プラグイン65-290-002の概略図

以下の図4は、Y軸外部ループ・スルー・ケーブルを使用して6つのプラグインを相互接続し、単一の 48×16 スイッチド・ガード・マトリクスとして構成された65-290のアプリケーション図の例を示しています。

Figure 4 - 65-290 configured as a 48x16 switched guard matrix

図4.48×16サイズのスイッチド・ガード・マトリックスとして構成された65-290

Pickering's LXI Scalable Switched Guard Matrix Plug-in (model 65-290-001)

ピカリング社のLXI スケーラブル・スイッチド・ガード・マトリックス・プラグイン (モデル 65-290-001)

65-290-001プラグインは、65-290-002 8×16マザー・ボードとそれに装着された機能的に同一の8×16ドーター・カードで構成される16×16マトリックス・モジュールです。16個のY信号はマザー・ボードからドーター・カード上の2つの8×8マトリックスにルーティングされ、ドーター・カードからの8個のX信号 (X9~X16) は、分離スイッチを介してこれら2つのマトリックスの間でリンクされ、図5に示すように追加の8つのMMCXコネクタにルーティングされます。16個のXバスと16個のYバスはどちらもループ・スルー接続を備えているため、Y軸またはX 軸のループの場合は最大サイズ96×16まで簡単にマトリックスを拡張でき、XとYの両方のループを使用する場合は48×32などのさまざまなマトリックス・サイズの構成を実現可能です

Figure 5 -  Schematic diagram of the 65-290-001 LXI switched guard matrix plug-in

図5. LXI スイッチド・ガード・マトリックス・プラグイン65-290-001の概略図

リレーとソフトウェア

プラグインで使用されるリレーは、これらのスイッチ・ガード・アプリケーション用に特別に開発された、ピカリング社のリレー部門であるPickering Electronics社のカスタム リード・リレーです。このリレーは、信号用のリードとシールドされたガード・リードで構成されており、両方とも同時に動作します。また、漏れを最小限に抑えるために、特別に設計された Mu-metal シールドとプラスチック製の筐体に囲まれています。ピカリング社のすべてのリード・リレーと同様に、これらは高精度で低レベルのスイッチング、高速スイッチ速度、高絶縁性、長寿命を備えており、このスイッチド・ガード・アプリケーションに最適です。

前述のように、半導体PCMアプリケーションでのテスト速度を最大化することは、タイムリーな生産へのフィードバックにとって重要です。パラメータ測定の速度を最大化するために、65-290シャーシにはスキャン・リスト・シーケンス・サービスが装備されています。これにより、すべての個別の測定のスイッチ設定のシーケンスがシャーシ コントローラ・ファームウェアにロードされ、ハードウェアまたはソフトウェア・トリガーによってシーケンスが開始されます。スイッチ状態シーケンスは LXI コントローラ自体に保存されるため、ホストCPUとイーサネット・トラフィックの負荷が大幅に軽減され、システム全体のレイテンシが短縮されます。

さらに、複雑なスイッチング・システムのプログラミングはピカリング社のSwitch Path Manager(自動信号ルーティング・アプリケーション)を使用すれば、各計測器と DUT の接続に必要な複数のリレー操作を、CONNECT (SMU3_HI、DUT_37) などの単一のエンドポイント間コマンドで解決でき、プログラミングを簡素化することができます。

PXI & PXIe Switched Guard Matrices (model 40/42-590)

PXIおよびPXIeスイッチド・ガード・マトリックス (モデル 40/42-590)

より小規模な微小電流パラメトリック・テスト要件向けに、スイッチ・ガード技術を PXI および PXIe 形式のモジュールに移植しました。これらには、シングル・スロットの16×4 スイッチ・ガード・マトリックス・モジュール (モデル 40/42-590-101) と、より小規模な 8×4 (モデル 40/42-590-102) のバリエーションが含まれます。それぞれ、最大1013Ωのチャネル間およびチャネル対グランド絶縁を備えたスイッチ・ガード・リード・リレー・マトリックスのソリューションを提供します。これは、図6に示すように、フロント・パネル上のループ・スルー・コネクタ(LT)を使用して隣接するモジュールのYバスを外部で相互接続することにより、X方向に拡張できます。

40-42-590-switched-guard-diagram-8x4 Figure 6 - Switching diagrams for 40/42-590 8x4 & 16x4 switched guard matrix modules

図6.40/42-590 8×4および16×4スイッチド・ガード・マトリックス・モジュールのスイッチング図

PXI Switched Guard Reed Relay Matrix (model 40-121)

PXI スイッチド・ガード・リード・リレー・マトリックス (モデル 40-121)

ピカリング社のスイッチ・ガード製品の3番目のファミリである40-121シリーズは、次の製品で構成されています。

Figure 7 - Switching diagrams for 40/42-121 switched guard relay modules

40-121-001のSPSTチャネルの例  40-121-011のマルチプレクサ・チャネルの例

図7.40/42-121 スイッチド・ガード・リレー・モジュールのスイッチング図

すべて1013Ω を超える絶縁抵抗を提供するように設計されたシングル・スロットのPXIモジュールです。信号/ガード同軸ケーブルは、使いやすい MS-M RFマルチウェイ・コネクタを介して接続されます。これらのモジュールは、追加の機器の接続または分離など、追加の汎用スイッチング機能をスイッチド・ガード・システムに提供するために使用できます。

まとめ

ピカリング社のスイッチ・ガードPXI、PXIeおよびLXI スイッチ製品は、半導体 ウェハー受入れテスト(WAT)およびLCRテストなどのその他の低リーク・テスト・アプリケーション向けに、コンパクトでコスト効率の高い、高性能スイッチング・ソリューションを提供します。この製品は、拡張性、寿命、およびさまざまなテスト・システムへの統合の容易さのために設計された業界標準のプラットフォームに基づいて設計されています。
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